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2020年12月16日水曜日

Sole Survivor / Helloweenの歌詞の考察~唯一人の生き残り




実に、6年以上ぶりの投稿となります。

とても長い月日が流れ、私を取り巻く環境は目まぐるしく変化しました。
幾つもの新しい世界で生まれ変っては死を繰り返し、
全く新しい常識と共に、より多くの新しい出逢いと別れを経験しました。

それは正しく輪廻そのものであって、
私は、世の中の成り行きという物を見ました。

ですが、もう十分です。
これ以上、旅を続ける必要は無いでしょう。
私はそろそろ、私が属すべき時と場所に戻ろうと思います。


そこに至った今、再び書き記す『言の葉』のモチーフは『Sole Survivor』。
Helloweenが1995年1月1日にリリースされた曲という事になっています(出典: wikipedia)。

Kai HansenとMichael KiskeがHelloweenを去った後、Andi Derisをシンガーとして迎え入れMichael Weikathと二人で書き上げた、全く新しいHelloweenの嚆矢とも言える楽曲です。

ジャンルとしてはPower Metalに属するらしく、この曲が収録されている『Master of the Rings』は全体として、Hansenが脱退した後の『Pink Bubbles Go Ape』のような俗っぽさを捨て去り、更に変貌を遂げています。

さて、ではここから歌詞の翻訳を行っていくわけですが、
例の如く、別の方が行った和訳について評論をしながら私流の歌詞の考察を行っていこうと思います。

考察を行うにあたっては、こちらのサイト『https://red-goose.com/solo-survivor-helloween/ 』の『歌詞及びその和訳』を例示する事としました。

それでは、行ってみましょう。

Sole Survivor

唯一の生存者
Composed: Michael Weikath, Andi Deris
Lyrics: Michael Weikath, Andi Deris

 

I got that fever
burning in my head 
俺の頭で燃えている熱を
くらっちまった

一体何なのでしょう? この意味不明の訳は?

まず、I got fever なのに、どうして『くらった』という受動態表現になるのでしょうか? 全く意味がわかりません。

それと、歌を聞いてみると『burning in my head』ではなく『burning my head』で、『頭を焼いている~』ですね。

そして、『get a fever』で『高熱に冒される』ですから、正しく書くとこうです。

I got that fever (that is) burning my head.
頭を焦がし続けるあの熱に冒された

もう、初っ端から狂っています。
次に行きます。

So many memories
no tear to shed

たくさんの記憶を
 洗い流す涙もなく

え? どこから『洗う』という言葉が出てきたんでしょう? 全く意味が分からない。
そして『~なく、…』って事はどこかに続くんですか? 何で続いちゃうんですか? 
理解出来ません。正しくは、こうです。

So many memories, no tear to shed.
沢山の想い出、流す涙は無い

次、行きます。

Burns like a fire
who stole my aims

炎のように燃えて
俺の目的を奪い去る

えー? どうしてそのwhoを関係代名詞だと思っちゃいました?
fireが人なわけないじゃないですか。関係代名詞ならばそこはwhichですよ?
そしてaimsですから複数形。そのくらいちゃんと訳しましょうよ。

正しくはこう。

Burns like a fire, who stole my aims?
炎のように燃えあがり、私の目標達を奪ったのは誰だ?

次に行きます。

My comrade fighters
been set astray

俺の仲間の闘士たちは
道に迷っている

はい、『迷っている』なら道案内してあげましょう。お友達なんですから。
正しくは、こう。

My comrade fighters (has) been sent astray.
私の同志達は堕落させられていった

astrayは『堕落して』(副詞)の方ですね。

大体、何ですか? 『闘士』って。『聖闘士星矢』の観過ぎなのではないでしょうか?

明らかに『戦闘を背景とした歌』ではないのですから、そこを『直訳』してどうするつもりなんでしょうか? 他については、“合っているのか間違っているのかを度外視”したとしても『意訳』ばっかりしているのに。

『set』は割と珍しい set set set という『三動詞不規則動詞活用』なのですが、ここは『set astray』ではなく『send astray』です。

意味は『give false or misleading information to ~=~に誤った情報や誤解をさせる情報を与える事』(出典:send astray : definition of send astray and synonyms of send astray [English])であって、これはこの後に続く二文節をそのまま表す事となりますが、文意としては『lead astray=誤った方向に導く、道に迷わせる、邪道に導く、堕落させる』(出典:weblio)であって、ここでは恐らく『堕落』を意味します。理由は最後に。

そしてここ、見れば分かりますが『過去分詞』なんです。何故だと思いますか?
少なくとも例示した翻訳者はここのところを全く理解できていません。
この言葉の意味も、一番最後にやって来ます。

次に行きます。

How could I know what
others had in mind for me

俺はどうやって他のことを
頭で考えることができるんだ

勘弁してもらえませんか? othersがhadしたんですよ? どうして『俺が他のことを考え』てしまうんですか?
本当に、関係代名詞くらい、ちゃんと理解して下さい。

正しくは、こう。

How could I know what others had in mind for me?
他の人たちが私の為に何を思うか、どうして私が知ることが出来ただろう?

have in mindで『考慮している』という慣用句ですね。

次行きまーす。

How could they know what
measures I take

奴らはどうやって俺が
選ぶ道を知ることができるんだ

えーと、takeが主旨だと思って『選ぶ』って訳してしまったんですか? そんなわけないじゃないですか。主旨はmeasuresの方、意味は『評価する、推し量る』です。
つまり『私の評価、私の判断』、そしてそれを指し示す関係代名詞であるwhatです。

更にいうと『How could they know / どうやって知ることができるんだ』って、他人の能力の可否なんか、分かるわけないですよね?

さっきの歌詞は自分の事だったから How could I knowだったんですけど、ここはちゃんと聞いてみれば分かりますが、How "would" they knowと歌っています。つまり『どうして知ることが出来ただろう?』で、日本語にすると似ていますが、意味は全然違います。『My comrade fighters』を『能無し』扱いしないでくださいね。

もっと言うと、『奴ら』って何すか? 曲がりなりにも『元 comrade(同志)』ですよ? 『奴』って言います? あ・り・え・な・い。

そして、『what measures I take』ではなく、ちゃんと聞いてみれば分かりますが『why measures I take』、つまり『私が判断した理由』です。“関係副詞” ですよー?

だから、こう。

How would they know why measures I take?
私の判断の理由を、どうして彼らが知ることが出来ただろう?

次行きまーす。

Sole survivor of
a kill without alert

警告なき殺戮からの
唯一の生存者

ここ、ほぼ間違っていない事は確かなのですが、私は、こう訳します。解説は一番最後に。

Sole Survivor of a kill without alert,
警告無しの殺戮からの唯一人の生き残りよ

次です。

Sing your feelings
on your song remains unheard
Sole Survivor

お前の気持ちを歌え、
聞かれることのないお前の歌にのせて
唯一の生存者

おーい、どうして命令形になっちゃうんだー?
『on your song』なら『お前の歌にのせて』じゃなくて『お前の歌に乗って』だぞー? 頭大丈夫かー?
もう、色々めちゃくちゃ過ぎ。正しくは、こう。

(Even if you) sing your feelings out, your song remains unheard, Sole Survivor.
君が心の内を叫んだところで、君の歌は誰の耳にも残らない。唯一人の生き残りよ

sing outで『叫ぶ、どなる』ですよー。慣用句、ちゃんと理解しましょうねー?
次行きまーす。

We share like brothers 
a light in the black 

俺たちは兄弟みたいに分け合って 
暗闇の中の光 

Totally blended, 
bold and erect 

完全に混ぜあった、 
太く高く

もー、正しくはこう。

We shared like brothers a light in the black.
我々は闇の中で光を兄弟のように分け合った

Totally blended, bold and erect.
太く真っすぐにそそり立ち、完全に交わった

後段は『セックスの直喩』のように見えて、実は『互いを信頼し合った事の暗喩』です。

But we’ve grown intriguers
till it’s too late

だが俺たちは策略者として育った
手遅れになるまで

育っちゃったんですね…。『育った』ならgrow upだろうなぁ…。

正しくは、こう。

But we've grown intriguers till it's to late.
だが我々は手遅れになるまで陰謀者へと変貌を遂げてしまった

はい、次…。

Time has brought fire,
fear greed and hate

時は炎を手に入れた、
恐怖は貪欲で嫌悪する

マジで言ってるっすか? bringって『運ぶ』っすよ? 何で『手に入れ』ちゃうんすか?
『恐怖“は”』? それ、主語っすか? どうして主語になっちゃったっすか?
正しくは、こう。

Time has brought fire, fear, greed and hate.
時は炎と恐れと貪欲と憎しみをもたらす

『A, B, and C』という列挙型、中学校の英語で習いますよ? 勘弁してくださいよ、本当に。
はい、次、2番のサビです。 

Now I’m crying,
I’m shattered on the ground

今俺は泣いている
大地の上で疲れ果てている

泣きたいのはこっちの方っすよ。『shattered』は確かに『くたくたになった』というshatterの過去形ですけどね、ここ、be shatteredということは過去分詞なので『くたくたにされた』ですよね?

誰から? 無いんです。その使役者が誰なのか説明されていないんです。
と、いうことは『間違い』。残念。

正しくは、こうです。

Now I'm crying. I shed on the ground.
今、私は嘆きながら大地の上で涙をこぼす

ちゃんと聞いてみれば分かりますが『I shed』と歌っています。
歌詞カード、そのまま信じたらダメっすよ?

All I find
has died anyway

俺が見つけた
全てのものは死に絶えた

はい、anywayどっか行っちゃった。勝手に単語を無かった事にしちゃ、ダメ。残念。やり直し。

正しくは、こう。

All I found has died anyway.
私が見つけた物すべてはとにかく死に絶えた

当然、『find』じゃなくて『found』ね。has died(現在完了)している物が同時に現在形であるわけないでしょ。

次行きまーす。

 Sole Survivor of
 a kill without alert
 Sing your feelings
 on your song remains unheard

ここは1番と同じなので説明は省略します。

Sole Survivor of a kill without alert,
警告無しの殺戮からの唯一人の生き残りよ

 (Even if you) sing your feelings out, your song remains unheard.
君が心の内を叫んだところで、君の歌は誰の耳にも残らない。

次が一番大切なところです。

Sole Survivor got
a voice without a sound

音のない声を持っている
哀れな虐待者たちは

Mean mistreaters
took away your ground
Sole Survivor,

お前の土地を取り上げた
唯一の生存者 

実は、これ全部で一文節なことは間違っていないのですが、意味が全然違います。
この翻訳者、全くこの歌詞の背景を理解出来ていなかった事が『私の訳』を見れば『一目瞭然』となるでしょう。

では、いきます。

『本当の意味』、つまりこの曲を書いた、恐らくはWeikathが一番言いたかった事は、
実は『これ』なんです。

Sole Survivor (who) got a voice without a sound,
音無き声を聞いた唯一人の生き残りというのは、

(Thus that means) "Mean Mistreaters" (who) took away your ground, Sole Survivor
(つまり)あなた自身の大地を奪った “不器用な者達” の事なんだ。唯一の生存者よ。

理解出来ますか? 『本当に孤独となったのは自分ではなく、去っていった仲間達の方だ』と言っているのです。

『人を本当に孤独たらしめる物、それは、弱く愚かなその人自身だ』と。

『Keeper of The Seven Keys』において『闇と光の戦い』を描いたWeikathがその先に視たものは、弱い人間が陥る『孤独と孤立』でした。それは恐らく、Weikathが当初想像もしなかった『8つ目の海』であったでしょう。

それは確かに、憎しみでも、恐れでも、無関心でも、貪欲でも、快楽でもありませんでした。
(5つ目と6つ目は不明。5つ目について歌詞カードでは『ignorance=無知』となっているが、実際には『of encurs』のように歌っている。これが『of man curse=男性の呪い』であったならそれは『快楽』と等価であると思われるが、であればやはり残りの2つが不明となる)

同志達の中に生じた不和、そしてHansenとKiskeの脱退という時の流れの中で、Michael Weikathという人はここまでの境地に至っていたのです。

ですから、この曲のタイトルである『Sole Survivor』の和訳は『唯一の生存者』等ではなく『唯一人の生き残り』、その実態は『恩恵』ではなく、闇に取り込まれた事を意味する『堕落』であって、『自ら打ち捨てられて取り残された孤児達』の事なのです。

これは『Keeper of The Seven Keys』のような『お伽噺』ではない、もはや『隠者が諳んじる愁いの唄』と称すべき物でしょう。
それは、Weikathこそが、Weikath自身が語った幻想の預言者、つまり『the seer of visions』へと変貌を遂げた事を意味します。

ここで言う所の『Mean Mistreater』とは度々楽曲の題材として取り上げられている言葉のようで(出典:weblio)意味は『人付き合いの下手な人』という事らしく(出典:Yahoo! 知恵袋)仲違いして分裂していった元Helloweenのメンバー達の抽象でしょう。

ノリの良いポップでエネルギッシュな曲調はWeikathが被った仮面『Persona』でした。
本当のWeikathの恐らく『Animus』は心の底から嘆き悲しんでいた。粉々になりながら大地に涙を落としていた。

これこそが『Rock』の真髄です。

その嘆きの意味すら理解出来ない者がWeikathの事を『ヴァイキー』だなどと呼んだとしたら、そいつは恐らく、人の心を持たない『猿が進化した何か』以外の何物でもないでしょう。



その名を汚すことを、断じて容認するわけにはいかないのです、
真なる “唯一の生存者" として。

以上です。