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2010年4月3日土曜日

Trezire de spirit 歌詞の考察~パチスロ:悪魔城ドラキュラ主題歌


KPEから2009年に発売されたパチスロ『悪魔城ドラキュラ』のBIG GAME中のBGMである、
Trezire de spirit(魂の目覚め)の歌詞を、極めて真面目に考察してみました。

オリジナルサウンドトラックの歌詞カードには、「本場のオペラ歌手を起用し、荒々しいギターにオーケストラを融合。まさにドラキュラのための楽曲なのです。(倉持武志氏@Composer)」とあり、悪魔城ドラキュラの世界観を如実に表した名曲であることは異論を挟む余地のないことだと思いますが、ルーマニア語だとされるその歌詞(http://pachi-slo.blogspot.jp/2009/07/big_24.html)には、かなりの誤りがあることが見て取れます。

まず、サビの Trainic victoria sbuletura viata ですが、
この sbuletura という単語をgoogleウェブページ検索してみましょう。ただし、あまりにもこの曲がすばらしいので、ほうぼうに歌詞が転載されているため、除外オプションとして、サビの冒頭の単語 -Acest -cuvint とします。

すると、

「sbuletura -Acest -cuvint に一致する情報は見つかりませんでした。」

となります。
つまり、googleがクロールした全てのページを見ても、sbuleturaという単語が含まれるページは、この曲の歌詞を紹介するページを除くと見つからないのです。
これは、ミススペル、あるいは全くの造語である可能性が極めて高いことを示唆します。

同様に、Aメロのacolo dracl dolma、Bメロの fa la nimics bletra domnezeuのうち、
dolma、nimics、bletra、domnezeuは、google翻訳、および、『ルーマニア語小事典(直野敦編著、株式会社大学書林)』において、検索不能な単語でした。

ただし、nimicという単語は存在し、「何も」という意味、また、domnezeuではなく、dumnezeuという単語は存在し、この意味は「神」でした。

dolmaについては、トルコ料理(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%9E)は検索できましたが、まず、これではないでしょう。

また、前述したvictoriaですが、これもルーマニア語では検索不能でした。ただし、これは英語で言うところの「勝利(victory)」であることは容易に想像でき、日本語からの逆引きを行うと、ルーマニア語では victorie となりました。(ちなみに、victoria はスペイン語で勝利の意)
(4/5追記:4/5現在、google翻訳においてルーマニア語→日本語で「勝利」としてvictoriaが検索できるようになっていました。)

bletraについてgoogleウェブページ検索した結果は、ほとんどが Bletra といった大文字から始まる単語で、これは、その多くが固有名詞として扱われていることを示唆します。

bletraについては、最後の最後まで謎でした。

さて、ここで、曲の歌いだしのサビについて見てみましょう。

si ambulem in medio umbrae(歌詞カードではumbroeで誤り) mortis
non timebo mala quoniam tu mecum es domine

この部分もまた、ルーマニア語ではありません。
なぜなら、ここは、聖書の詩篇23章、ダビドの詩の第4節のラテン語の引用だからです。

死の暗き谷間をさまようことになろうとも私は恐れないでしょう、
いかなる所にても、あなたは私と一緒にいるのですから、主よ。
http://www.geocities.jp/traumeswirren1212/Requiem/note.htmlより引用)

歌いだしのAVE MARIAは、「こんにちは、マリア様」「おめでとう、マリア様」といった意味のようですが、あなた=主 domine は当然キリストや神を指し、マリアとは別人格です。

ですからAVE MARIAからdomineまでを一つの文節と考えると、かなりの論理的矛盾が生じてきます。まぁ、短い曲の中に詰め込まれたので、しかたのないことなのでしょう。

さて、先ほどの不明な単語に戻ります。

この解明には、正規の翻訳サービス会社を利用してしまいました。
多言語を得意としていると謳っている2社に対して、テープ起こし+翻訳の相見積もりをとったところA社は2万円であるのに対し、B社は3千円でした。
A社はルーマニア語が不得手で、かかえの翻訳者がいないか、あるいは、個人の金にならない仕事は請けたくないということでしょう。

安かろう悪かろうではもともこもないのですが、まさか、スロットの主題歌の歌詞を調べるのに2万円は出せないので、B社に依頼してみることにしました。もし、まともな翻訳がされなければ、さらに自分で調べる覚悟で。

結果は、思いのほか明るいものでした。

まず、大きな謎であった sbuletura ですが、B社のテープ起こしでは sărbătorea とされていました。意味は「讃える、祝福する」です。発音は〈サルバトレア〉でしょう。

trainic victorios sărbătorea viaţa
永遠につづく成功が人生をたたえる

(B社翻訳ママ。victoriosとなっているのは、歌がvictoriaと歌われているため、近い発音の単語であるvictoriosを選択したものと思われる。ただし、victoriosは「勝利の~」という形容詞であり、動詞である sărbătoreaの前につくのは不自然で、やはりvictorieが正しいと思われる)
(4/5追記:4/5現在、google翻訳においてルーマニア語→日本語で「勝利」としてvictoriaが検索できるようになっていました。よって、歌に忠実にするため、victoriaを採用します。)

これは、ほぼ間違いないでしょう。

しかし、実際の曲を聴いてみると、ここの単語頭の発音は「サ」ではなく「ス」です。
これはどういうことでしょうか?

http://romana.fc2web.com/Lectia1.htm
このページを見ると、そのヒントがつかめます。

ルーマニア語には a ă â というアルファベットがあり、ăはアとエの中間の[æ]ですが、âはイの口で喉の奥からウと発音します。

「本場のオペラ歌手を起用」とありましたが、オペラの本場はイタリアであり、恐らく、ルーマニア人のオペラ歌手を使ったわけではないのでしょう。このため、ăとâを間違えて発音し、〈スルブトレア〉となったものだと思われます。ルーマニア語には存在しない〈スルブトレア〉を無理矢理テープ起こしした結果が、sbuletura という未知の単語を生み出したのだと推測されます。

同様の理由で、victorieがvictoriaと歌われているとも推測できます。
(4/5追記:4/5現在、google翻訳においてルーマニア語→日本語で「勝利」としてvictoriaが検索できるようになっていました。よって、歌に忠実にするため、victoriaを採用します。)

また、dolmaについては、B社の翻訳で、dormea 「眠る」の誤りであることが分かりました。歌詞カードではrとlを間違えています。

曲を聞くと、この部分でははっきりと「ドルマ」と歌っていて、「ドルメア」ではないのですが、実は、イタリア語で睡眠のことを dorma と言うようです。やはり、イタリア語になれているオペラ歌手で、発音を間違えたというのが確度が高いようです。

オペラの曲にNessun Dorma(誰も寝てはならぬ)という名曲があるようです。
http://www.youtube.com/watch?v=09blx5HEbiM

また、acest cuvint の cuvint ですが、これはルーマニア語で「言葉」を意味するので、正しくルーマニア語のアルファベットを用いると、cuvînt となります。ところがルーマニア語では、単語の途中ではâを用い、単語の先頭か末尾の場合だけî を使うということになっているので、正しくはcuvant(cuvânt)と書くべきだったのではないでしょうか?(社会主義時代には少し違うようです。http://homepage3.nifty.com/fd-usagi/letters/letters-ro.htm

これもミススペルと受け取れます。

ちなみに、âと î の発音は同じで、前述のとおり、イの口で喉の奥からウと発音するようです。
歌では、コゥヴィントと発音していますが、正しくは恐らく、クーヴゥントとなるのでしょう。

最後に残った謎の単語 bletra は、本当に難関でした。Death以上の強敵といっても過言ではありません。

B社のテープ起こしでは、

Din Ceruri (dornicが欠落) voce, dar aici nimic în sus nu vede Dumnezeu
天からの声、しかし天上からはなにもみえない

となっていました。翻訳者の苦労が伺えます。

しかし、これはやはり不適切でしょう。前後の文脈から、こんな絶望的な歌詞がでてくるとは到底おもえません。

ただ、これではっきりしたことは、まともなテープ起こしが出来なかった以上、やはり bletra もルーマニア語ではない、ということです。

では、何語なのか?

その答えを、

http://intertran.tranexp.com/Translate/result.shtml
この自動翻訳が出してくれました。

ここで、変換ペアの片方を English にしてもう片方を変えてみました。

ハンガリー語を選ぶと、ostobán locsog, ostoba fecsegés、意味は「愚かなたわごと」

ブルガリア語を選ぶと、празни приказки, глупости, дрънкам празни приказки、意味は「無駄口をたたく、ナンセンス、たわ言を言う人」

ポーランド語を選ぶと、plecie głupstwa, puste gadanie、意味は「愚かな、空の約束を編む」

ロシア語を選ぶと、болтовня, болтать вздор、意味は「ばかげたことせせらぎ」

セルビア語を選ぶと、lupetati svašta、意味は「無駄話も」

(それぞれ、各国語から日本語への翻訳はgoogle翻訳を用いた)

これは、ほぼ間違いないでしょう。
bletra とは、英語であり、「無駄口をたたく、愚かなことを言う」という動詞名詞だと推測できます。日本の英和辞典は10冊程度みましたが、bletraは記載されていませんでした。おそらくヨーロッパの辞書にしか載っていないのでしょう。

これで、最後のピースが埋まりました。

B社のテープ起こしにもどってみると、
dar aici はルーマニア語で「しかし ここ」という意味ですが、
歌の発音はあきらかに「ファラ」と歌っています。

さらに、歌詞カードで nimics とされている部分をよく聞くと、「ニ ニミックス」と聞こえます。

falaではなく、faraではないかと考え検索してみたところ、「~せずに」という意味でした。
また、ni nimicで「私たちはなにも」という意味で、ここに、B社のテープ起こしを勘案すると、

fara ni nimic în sus で、「私たちは何もなしで」となり、
ルーマニア語の無駄口という意味の paravre を補って
fara ni nimic in sus palavreで検索すると、意味は「私たちは何も無駄口を開くことなく」となり、
前後の歌詞と理路整然と合致しました。

しかし、なぜここで、paravre のような純粋なルーマニア語ではなく、bletra が用いられたのかは定かではなく、もしかしたら誤りである可能性は否定できません。



さて、ではこれらを踏まえた上で、実際の歌を考慮したルーマニア語の歌詞とその直訳はどうなるか、見てみましょう。

完全に正しいかどうかは微妙ですが発音と、さらに歌い方も併記してみました。()で記した語は、歌ではほとんど発音されていません。


Trezire de spirit
魂の目覚め
トレジレ デ スピリトゥ


AVE MARIA
恵み溢れる、聖マリア
アヴェ マリア
アーヴェー マーリーア


“Si ambulem in medio umbrae mortis, non timebo mala:
“死の暗き谷間をさまようことになろうとも私は恐れないでしょう、
シー アンブレム イン メディオ アンブラエ モルティス ノン ティミエボ マラ
シー アンブレムイン メディオ アンブラエ モールティス ノーン ティミエボ マーラー


quoniam tu mecum es, Domine”
いかなる所にても、あなたは私と一緒にいるのですから、主よ”
クゥヲニアム トゥ メークム ィエス ドミネ
クゥヲニーアム トゥメー キューミェス ドーミネー


Cu acest cuvânt la piept cu cruce,
十字架と共にこの言葉を胸に
ク アチェスト クーヴゥント ラ ピエプトゥ ク クルーチェ
(ク)アーチェスト コーゥビント ラ ピエプトゥ クーーー クルーチェー


acum mergem la palat diavolului
今は向かう悪魔の住む宮殿
アークム メルジェム ラ パラト ディアボルルイ
アークム メルジェム (ラ) パーーラト ディーアーボールルイ


În codru, merge în ceaţă;
霧の立ち込める森を抜けると
ゥン コードゥル メルージェ ゥン チェアツァ
(ゥン) コードゥルー メールージェー ゥン チェーアーター


acolo dracul dormea
そこにはドラキュラが眠っている
アーコロ ドラキュル ドルメア
アーコーロ ドーラーキュール ドールマー


Din cer dornic voce,
天からの熱き声
ディン チェル ドルニック ヴォーチェ
ディーン チェール ドールニック ヴォーチェー


fara ni nimic în sus bletra, Dumnezeu
我々は愚かな嘆きなどこぼしません、神よ
ファラ ニ ニミック ゥン スース ブレトラ ドゥムネーゼウ
ファーラー ニー ニミックゥン スース ブレトラ ドームネーゼーウ


Hai sa mergi !
さあ、行くぞ!
ハイ サ メルギ
ハーイ サー メルギー


Cu acest cuvânt la piept cu cruce,
十字架と共にこの言葉を胸に
ク アチェスト クーヴゥント ラ ピエプトゥ ク クルーチェ
(ク)アーチェスト コーゥビント ラ ピエプトゥ クーーー クルーチェー


trainic victoria sărbătorea viața
永遠に続く勝利が、人生を讃える
トレイニック ヴィクトリア サルバトレア ビアーツァ
トーレイニック ヴィクトーリーアー スルーブートレア ビアーター


Cu acest cuvânt la piept cu cruce,
十字架と共にこの言葉を胸に
ク アチェスト クーヴゥント ラ ピエプトゥ ク クルーチェ
(ク) アーチェスト コーゥビント ラ ピエプトゥ クーーー クルーチェー


acum mergem la palat diavolului
今は向かう、悪魔の住む宮殿
アークム メルジェム ラ パラト ディアボルルイ
アークム メルジェム (ラ) パーーラト ディーアーボールルイ


こうしてみてみると、歌詞カードの和訳(http://pachi-slo.blogspot.jp/2009/07/big_24.html)が、かなりの意訳であることがわかります。

おそらく歌詞カードの訳を書いた人は、当初の僕と同じように bletra や sbuletura といった単語の意味が分からずに苦労したのでしょう。
あるいは逆に、日本語の歌詞をルーマニア語の歌詞に翻訳した人が苦労した結果なのかもしれません。

以上が、僕のTrezire de spiritの考察の全てです。

かなり痛い話ですが、僕は実機を打つとき、BIG GAME中は一緒に歌っています。
特に、În codru, merge în ceaţă; acolo dracul dormea の部分の高揚感は異常なほどで、
一度歌ったら病み付きになります。

どうかみなさんも、この歌を十字架と共に胸に、悪魔の店長の住む宮殿(ホール)に今日も向かって下さい。



mission complete !

このギターが気持ちいい

 2012/11/10追記

これほど楽しかったスロットですが、規制の強化による客離れの進行、過剰な出球追及による設定の絞込み、それによる更なる客離れのスパイラルなどが重なり、とても娯楽で楽しめる遊戯ではなくなってしまいました。

今ではほとんど打ちにいくこともありません。

 たまに、あの頃を思い出して気持ちがうずくこともありますが、もう、衰退していく産業なのだろうなと悲しい目で見ています。




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